【紡ぐ】今日の預かりは1台

 県独自の緊急事態宣言下、営みの最前線を歩く。

 宮崎空港の周りに広がる民間駐車場。駐車場不足を割安な料金で補ってきた老舗駐車場の敷地に車は疎らだ。新型コロナ禍で航空機の減便が相次ぎ、県外との移動自粛もあり、空港の利用客は大きく落ち込んでいる。その影響は直結する。昨年の売り上げは、前年の1割を切った。この1月はさらに厳しい。「今日の預けは1台だけ」。空港ビルへの送迎車ではドライバーが時間を持て余している。

 夫を亡くした後、会社を引き継いだ女性経営者。70歳が目の前に迫ってきたという。手元には県の飲食関連業支援策を伝える新聞が広げられている。
「みんな大変よね。よくわかる。でもね、私たちのことは忘れられちょっちゃないやろうかって気になる。どうして私たちには目も向けてもらえんちゃろかって、歯がゆくてたまらん。宮崎弁で“しんきなー”ってなるとですよね」。
 知事に2度手紙を書いたという。一度は担当課から電話があった。でも誰も状況を見に来るわけではない。
「特別なことをしてほしいわけじゃないの。でも忘れられているというのが何とも言えない喪失感。私たちも頑張ってるから仲間外れにせんでって。弱っているから声をかけてほしい、気にかけてほしいって、こんなこと思ったらいかんちゃろうか」。
 手元の大学ノートには日毎の預かり数が並ぶ。前年度の数字は赤文字。その隣に寂しい今の数字が黒文字で几帳面に示されている。生の数字を目にすると言葉がない。
「国や県にはみんな状況を調査する人たちはおらんちゃろうか。誰か見に来てって本当に思っていた。こうして話せただけで今日はよかったって思える。聞いてもらえるだけで頑張る力になるから」

 黙って話に聞き入ることしかできなかった。

 県独自の緊急事態宣言が明ければ、知事も空港から東京に向かうことがあるだろう。そう時間がかかるわけじゃない。ぜひ公用車を止めて自分で声をかけ、自分で話を聞いてほしい。視察だ、調査だと大事に構える必要はない。
 彼女は言った。「知事の言葉は重たい」。知事の重たい言葉の背景には市井のたくさんの声があるべきだ。知事が声を受け止めて、頷くだけでも救われるものはある。
【渡辺創】

#宮崎の声を紡ぐ