【紡ぐ】突き抜けた青空の下で

 県独自の緊急事態宣言下、営みの最前線を歩く(28日投稿の続き)

 冬場の宮崎らしい高く突き抜けた青空が広がる。宮崎の玄関口・宮崎空港に程近い民間駐車場ではこの1年、駐車状況を示す看板が赤文字の「満車」に切り替わることはなかった。

 午前6時過ぎには開店する。今の季節はまだ夜明け前だ。「コロナの影響で朝一便は運休中だからこの時間に開けなくてもいいだろうけど、早く来るお客さんがいたら困るだろうからね」。68歳の女性経営者は長年の習慣をなかなか変えられない。この仕事に携わって30年。車を預けているお客さんが交通トラブルで営業時間に間に合わない時には、深夜でも未明でも対応することもあった。
 「ちっぽけな仕事かもしれないけど、大事な旅立ちや疲れて帰ってきた時にお客さんに気持ちよく過ごしてもらいたい。そう思っていると自分の仕事も楽しくなるから」。

 コロナ禍で苦境が続く。駐車料金は1日600円。一日の収入が1800円という日もあった。
 「料金のキリが悪いでしょ。以前はね、常連さんが何百円はまけてよって冗談言ってたの。でも今は『お母さん、おつりはいいから』って。この間も女性が2400円なのに3000円出して『とっといてください。また来るから頑張って』って。押し問答でお返ししたけど、お客さんが心配してくれているんだって、私たちのことをわかってくれているんだって、正直嬉しかった」。

 この一年で借りていた敷地の一部を返還した。地代を払う余裕がなくなったからだ。今はその境目にフェンスが立っている。国の救済策による無利子借り入れは、固定費の支払いでまもなく底をつく。「本当に申し訳ない」と思っているが、手伝っている息子の給与は夏から我慢してもらっているという。
 不安はたくさんあるはずだ。リモートが定着して以前のようにビジネス出張はなくなるとの見通しもある。「聞いてはいけないかな」と迷いながら今後の見通しを聞いた。

 「きっともう一度みんながニコニコして旅する時期が来ると思うのね。もう一回、みんなのそんな姿を見ないとやめられない。これでも宮崎の玄関口を支えてきたという気持ちがあるからね」。
 彼女はガランとした駐車場を眺めながらそうつぶやくと、力を振り絞るように笑顔を作った。
【渡辺創】

#宮崎の声を紡ぐ