「大阪都構想」など全国的に注目を集める大阪市長選と大阪府知事選のダブル選挙。23日の「勤労感謝の日」に関西地方を訪れたので、市長候補2人の街頭演説を聞いてきました。
祝日の繁華街での街頭演説ということもあり、両陣営とも応援弁士にビッグネームを投入。なかなか聞き応えのある演説会でした。現職の平松陣営は、今は自民党を離党している野中広務氏、評論家の佐高信氏ら幅広い多彩な顔ぶれ。橋下陣営は、府知事候補と並び「平成維新の会」を前面に出し、「府」と「市」の一体改革を強調。みんなの党の渡辺喜美代表や愛知県の大村知事がマイクを握りました。
選挙戦の最中なので、無責任な論評は避けます。27日の大阪市民、大阪府民の選択がいかなる方向性を示すのか、興味深く見ていようと思います。ただ双方の話を聞きながら、この選挙には実に多くの考えるべき課題が提起されているという印象を持ちました。
例えば「政令市と府県の関係」。私も新聞記者時代に初任地の神奈川県で5年間勤務しましたので、様々な機会に「横浜市」と「神奈川県」の関係性を垣間見てきました。まして神奈川県は横浜、川崎という政令市を2つ(今は相模原も加わったので3つ)抱えていました。人口も850万の神奈川県(今は900万超)のうち、横浜市が40%程度、川崎市が15%と2政令市で半分以上を占めていました。こうなると言い方は妙ですが、神奈川県は「町村担当」という印象です。
大阪府も大阪市、堺市と政令市が二つになり、特に大阪市は関西全体の中心という顔もあります。大阪府知事になった橋下氏が様々な取り組みを行う中で財源も権限も持つ巨大な「大阪市」という存在が、橋下氏にとってのある種の“障壁”と感じていたのでしょう。その気分はわからないではありません。
その解決策が、移行には法律的な課題も多い「都構想」というのが妥当なのか、その賛否はともかく、明治期に基本形ができた国・都道府県・市区町村という構図が制度疲労を起こしているのではないかという議論は重要ではないでしょうか。今回の選挙結果は、直接・間接的に多くの自治体にも影響するでしょう。拙速な結論を出す必要はありませんし、道州制か否かという議論だけではなく、新しい時代の地方自治のあり方を積極的に見直す時期を迎えていると感じています。
さて今回の大阪市長選、その選挙構図も注目されています。橋下氏の「市長選鞍替え」というアクションに加え、その言動、教育基本条例案の問題などによって「反・独裁」(すごい言葉ですね・・・)というテーマも焦点として浮上。よくは知りませんが、そのスマートな風貌などからも温厚な紳士という印象を受ける平松氏と、タレント弁護士時代から過激な発言が目立っていた橋下氏という個性の違いも影響しているのでしょうが、街頭演説会の周辺でも「反独裁政治」というキャンペーンを目にしました。共産党が大型選挙で候補者擁立を見送るという異例の対応もしたことも、ある種の“危機感”なのだと実感しました。
ただ、向こうで聞いた限りでは、実は市民的盛り上がりはいまひとつとの声も・・・。さあ、どういう結論を大阪市民が出すのか、注目して日曜日の夜を迎えたいと思います。
【渡辺創】