安倍総理が各世帯(というか住所地ごと)に布マスクを2枚ずつ配布すると表明した。確かにマスクは手に入らない。スーパーやコンビニ、ドラッグストアに寄るたびに陳列棚を眺めるが、手に入ったことがない。「自らの身を守る」から「感染しているかもしれない自分から広げない」という段階に移った今、マスクがないよりあった方がいいのは確かだ。
ただ、「今頃、それか・・・」という気持ちが漂う。1カ月前に「月産6億枚にした」と胸を張っていたのは誰だったか。あ、安倍さんではなく、菅さんだったか。この間に、国民はみんな知恵を絞り、工夫をしてマスクを節約し、手作りマスクを作った。この状況に国民は向き合って、打開しようと努力してきたのだ。
しかも、よくわからない「各住所に2枚ずつ」という基準。再来週からの配布で、感染の多いところから。きっと準備作業も考えれば全国で終わるのはGW頃ではないのか。
予想はつく。「国民はマスクを求めている(これは事実)」という命題に、効率よく低コストに対応する策を考えた結果、「なんで取り組んでいるのか」が危うくなってきて、本末転倒になったのだろう。報道によると、「日本郵政が持つすべての住所に配布するシステム」を使うという。きっと「配達地域指定郵便物」だと思う。エリアを指定すると全世帯に届くので、政治活動などでもよく使われる。たしか25グラムまで29円。よほど恩着せがましい文書でも入っていない限りはマスク2枚なら25グラム以下だろう。
政府も一所懸命努力していることはわかる。各ポジションで奮闘している人たちがいる。だから批判のための批判はしたくない。徹底した議論は肝要で、建設的な指摘はきちんと受け止め、判断ミスは素直に認める方が国民の信頼も醸成されるのではないか。
今必要なのは、住所地に2枚ではなく、必要な人が必要な時に自制的に購入できる環境を一日も早く整えることだろう。
【渡辺創】