【レポート】東九州プロジェクト視察報告

※先日発行された民主党宮崎県連の機関紙「プレス民主宮崎県版」に寄稿した原稿がありますので、掲載します。ちょっと長いですが、先進地視察の雰囲気が伝われば・・・

宮崎・福岡・大分3県連プロジェクト「合同調査」レポート

【報告者】 3県連連携プロジェクト事務局長・渡辺創(宮崎県連幹事長)


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 民主党宮崎県総支部連合会は、福岡、大分両県連と協力し、県境を超えた東九州地域の発展を一体的に考える事業に取り組んでいます。2016年度中に北九州〜宮崎間が開通する見通しの東九州自動車道のメリットをより一層高めるためのプロジェクトです。

 5月19〜21日の3日間、各県連から6名のプロジェクト委員が参加し、富山県などで合同先進地視察を実施しました。宮崎県連からは、田上紀長宮崎市議、富井寿一日向市議とプロジェクトリーダーの筆者が参加しましたので、プレス民主県版紙面を通して、活動の様子をレポート致します。


<スマートICの現実>


 19日早朝に福岡空港を飛び立ったANA314便は、午前9時5分に小松空港(石川県小松市)に到着。すぐにレンタカーに乗り込み、3日間の視察がスタートしました。

 初日の視察は3ヵ所。まずは小松空港の利便性を高めるため、北陸自動車道の「安宅PA」に設置されたスマートインターチェンジ(SIC)の状況調査です。安宅SICは、牛若丸と弁慶の「勧進帳」で有名な安宅関に近く、石川・福井両県の「空の玄関」から5分の距離に位置しています。

 
 SICは、ETC搭載車のみが対象ですが、通常のインターチェンジ(IC)に比べ、簡便な設備で高速道路の乗降が可能なため、既存のICまで距離があり、背後地にベッドタウンや工業団地などを抱えた地域で、通勤の利便性や物流の効率化を狙って全国的に設置が進んでいます。宮崎県内でも国富町や都城市(旧山之口町)などで設置を目指した動きが進んでいます。


 同SICは、08年の社会実験を経て、09年4月から本格稼働しています。対応いただいた石川県土木部によると、開設時に1日あたり1400台の乗降を想定していましたが、現状は同1000台。必ずしも狙い通りではなく、「ペイする水準にはない(投資効果が十分でない)」(同部)との本音も聞かれました。


<インフラをどう生かすか>


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 午後は、隣県・富山県富山市に移動。同市は、北陸新幹線の開業を来春に控えています。同新幹線の開業により、東京〜富山間は2時間7分。現在の上越新幹線(越後湯沢乗換)・在来線での行程と比較すると約1時間短縮されます。さらに中部地方を縦貫し、太平洋と日本海を結ぶ「東海北陸自動車道」も全面開通。海運面では伏木富山港という国際港湾も整備されており、総合的な交通網の充実が図られつつある地域です。

 
 同市では、まず「富山経済同友会」を訪問。新幹線開業に向け、提言をまとめた同会新交通問題委員会からのヒアリングが目的で、地元地銀・富山第一銀行の横田格頭取、日銀富山事務所の佐子裕厚所長と意見交換しました。


 北陸新幹線の始発・終着は、「東京」と、古くから北陸の中心都市である「石川県金沢市」です。商圏も大きく、観光資源も豊富で、富山から見れば新幹線開通による利便性の向上という利益と同時に、富山の資源が吸い出される「ストロー現象」のリスクを抱えることにもなります。しかし、意見交換した横田頭取をはじめ富山経済界の発想は、極めて前向きでした。


 「新幹線が通るからよかった、ではなく、それをどう活かして効果を持続させるかを考えている。東京やさらにその背後にある各地域と富山は確実に近くなる。今まで富山の経済にとって域外だった地域からの富や資源をいかにして流入させるかが重要。新幹線開業を通してパイの拡大を図りたい」と横田頭取の言葉も熱を帯びます。東九州道開通に向け、資源の流出ではなく、いかにして流入に結びつけるかは宮崎県にとっても最大の課題であり、意見交換は予定時間を超過し、充実したものになりました。


 その後は、富山県庁で同県観光・地域振興局から新幹線開業に向けた観光戦略をヒアリングし、初日の調査活動を終えました。


<“こだわり”の中心市街地活性化>


 二日目は、富山市役所を訪問し、多くの地方都市が抱える共通の課題である「中心市街地活性化」の取り組みを調査しました。富山市は人口42万1953人(直近国勢調査)。周辺自治体との合併前の旧富山市が人口約30万人なので、
宮崎市とほぼ同規模の自治体です。

 同市中心部の総曲輪(そうがわ)地区は、大手デパートの撤退などを契機に繁華街の“地盤沈下”が進んでいました。そこで同市は、市街地の再整備に着手。平成19年に賑わいの中心拠点となるガラスの屋根で覆われた全天候型の広場「グランドプラザ」を開設。さらに今後、「ガラスの街・富山」をアピールするためのガラス美術館などが入居する再開発ビルが来年度開業するほか、郊外型ショッピングセンターに流れてしまった客層を取り戻すためのシネマコンプレックス(大型映画館)の誘致にも取り組んでいます。


 さらに、コンパクトシティーを目指す同市の最大の注目点は、地方都市でありながら、公共交通の充実に積極的に取り組んでいることです。
元々、同市内ではJR富山駅南口を起点に、駅南側に広がる官庁街・繁華街を中心にした路面電車が営業していました。同市は、中心部に人を呼び込むためには、交通の利便性を高めることが必要と判断。「路線の環状化」を決断し、全国でも珍しい上下分離方式で欠けていた区間の整備を進めました。上下分離方式とは、路面電車の軌道は行政が整備し、運航は民間にゆだねる整備方法です。
さらに新幹線開業に向けて進んでいるJR富山駅の再整備に合わせ、現在駅北側で運航しているライトレール(LRT、路面電車の一種)と南側の路面電車が相互に乗り入れる環境を整える準備をしています。


 この富山ライトレールは、平成18年に開業した国内初の本格的LRTで、騒音を抑えたデザインや全低床車両で全国的な注目も集めています。また「アヴィレ」と呼ばれる自転車の市民共同利用システムは、市内中心部17か所のステーションに170台の自転車が配置されており、中心部の回遊性をさらに高めています。宮崎市とほぼ同規模の地方都市ですが、公共交通機関を軸にした街づくりには、次元の違いを感じざるを得ませんでした。


<NEXCO中日本のチャレンジ>


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 視察団は午前中で富山市を離れ、一路北陸道、東海北陸道を走り、岐阜県を目指しました。途中、合掌造りで有名な白川郷などを通過し、岐阜県多治見市の「NEXCO中日本」多治見保全サービスセンターに到着したのは、午後2時半。同社は旧道路公団。高速道路の建設・管理・運営を行う会社ですが、同業3社(東日本、中日本、西日本)の中で、最も関連事業での収益確保に熱心で、娯楽性が高く、全国でも注目を集める「海老名SA」(神奈川県海老名市)なども運営しています。


 今回の調査目的は、同社が初めて取り組む「高速道路を活用した誘客事業」について話を聞くためです。岐阜県土岐市の土岐IC付近に、中京圏から年間565万人を集める大型商業施設「土岐プレミアムアウトレット」(三菱地所)があります。同社は、このアウトレットモールとICの中間地点に大型スーパーや入浴施設などを集めた複合施設の建設を計画。地域の特産品を販売する施設も建設し、地元地域と連携した形で、高速道路利用者を誘客する施設の運営に取り組もうとしています。


 サービスセンターでのヒアリングの後は、土岐市内の建設予定地に移動。近距離にあるアウトレットモールを見渡せる場で、建設計画についての説明を受けました。最終日の21日は、「土岐プレミアムアウトレットの視察を行い、全日程を終えました。


<7月には福岡市内で3県連フォーラムを開催>


 福岡、大分、宮崎の3県連は、7月8日に福岡市内で高速道路開通を地域発展につなげるための「東九州軸フォーラム」を開催します。基調講演や様々な形での意見交換を予定しており、今回の視察報告も行います。今後の取り組みもプレス民主宮崎県版等を通して発信して参ります。