知事の出馬表明で考えた

 宮崎県議会11月定例議会の一般質問が今日(27日)から始まりました。

 初日は事前の新聞各紙の報道もあり、再来年1月に任期満了を迎える河野俊嗣知事が、残すところ1年強となった次期知事選へ出馬表明するか否かに注目が集まりました。

 結論から申せば、知事は最初に登壇した自民党・坂口議員の質問に応える形で出馬の意向を表明しました。私も9月議会の民主党県議団代表質問で、態度表明を求めましたが、その時点では「然るべき時に判断する。1年以上前に問われること自体に驚いている」などと答弁し、態度は鮮明になりませんでした。その後、東国原前知事の出馬意向が報道されたり、主要経済団体からの出馬要請があったりと環境が変化したということでしょうね。

 さて、今日は河野知事の2期目への出馬表明をテーマにしますが、記したいのはその賛否や評価ではなく、政治家の意思の示し方・・というかロジックの組み立て方による印象の違いについてです。

 今日、本会議場で知事の答弁を聞きながら、気になったのは「受け身での出馬表明」との印象が漂ってしまったことです。

 おそらく新聞やテレビで知事答弁の要旨を短くまとめると、こうなります。

 「次期県政においても重責を担わせていただきたい。宮崎県の先頭に立って、宮崎の希望に満ちた未来を切り拓いて参りたい」

 おそらく、こうまとめられるはずです。「どこが受身なの?」と思われるでしょうが、実際は、知事の答弁を頭から聞いているとここに至るまでに縷々説明があります。正確にメモしていませんので、記憶に頼りますが、ざっくりまとめれば、知事答弁の組み立ては次のようになります。

①就任以来、口蹄疫からの復興、鳥インフルエンザ、新燃岳の噴火活動などの危機事象に全力で対応してきた。 

②危機事象への対応が落ち着いてからは、宮崎の今後の発展を考え、対話の県政を進めながら、南海トラフ対策や産業基盤の強化(東アジア戦略やフードビジネス、東九州道開通を見越した施策展開も含め)に力を注いでいる。人口減少社会も見据えて将来の宮崎を支える人財作りにも力を注いでいる。 

③自分自身は与えられた任期を全力で一所懸命やることしか考えておらず、9月議会のような答弁(「しかるべき時期に判断」)になった。 

④しかし経済10団体の要請や様々な県民の方々から要請を受け、温かい声援をいただいた。その声に背中を押された。 

⑤したがって、「次期県政においても重責を担わせていただきたい。先頭に立って宮崎の希望に満ちた未来を切り拓いて参りたいと決意し、出馬を決断した」

 カギカッコ以外は正確な単語ではありませんが、まあ趣旨はこういう組み立てでした。

 さて、みなさんの印象はいかがでしょうか?

 非常に論理的ですが、これでは説明文。というのが私の印象。

 私は元々毎日新聞の政治部記者でしたので、政治家の演説や国会答弁を聞く機会は少なくはありませんでした。その立場で考えると、今日の答弁はもう少し工夫ができたかなというのが正直な感想です。議会や経済団体からリーダーシップに疑問符を投げかけられている(私がそう思っているかはともかくとして・・・)河野知事が、今日の答弁で最も強調すべきだったのは「明確な意欲」と「自ら判断するという政治家としての強いイメージ」だったはずです。そうであれば、同じ内容を並べ替えるだけでも実は印象は変わったはずです。

 たとえば一例。①〜⑤を、⑤→③→④→①→②と並べ替えてみましょう。

 少し調味料を加えながら、答弁風にまとめれば・・・・

 「次期知事選について私の動向を問う質問をいただきました。私は次期県政においても重責を担わせていただきたい。県民の先頭に立ち、宮崎の希望に満ちた未来を切り拓くため、次期知事選にも立候補いたします。9月議会で答弁したように、私は与えられた任期を全力で一所懸命に務めることを自らに課していますが、経済団体また多くの県民の皆さんから要請を受け、温かい声援を送っていただいたことが決断にあたり、大きく背中を押してくださったことは間違いありません。就任以来、口蹄疫からの復興、鳥インフルエンザ、新燃岳の噴火活動と危機事象と対峙をしてきました。一定の落ち着きを取り戻した今は宮崎の未来を考え、南海トラフへの備え、宮崎の産業基盤の強化、そしてまた人口減少社会においても宮崎のエネルギーを生み出していくための人財づくりに力を注いでいます。この取り組みをしっかりと実のあるものにするためにも、2期目も県政のかじ取りを担う覚悟で取り組んで参ります」

となるはずです。

 もちろん他にも組み立て方はあると思いますが、やはり政治家の言葉は、印象も含めメッセージ性が大切なはずです。まあ、今日の答弁も丁寧に説明しようとする河野知事らしさと言えばそうなのですが、今日の場で最も重要なのは、説明よりも自らの意思や意欲をより明確にすることであり、その熱意を県議や職員に伝えることだったと思います。

 そのあたりの違和感が「受け身の表明」という印象になったのかなと感じています。

 まあ知事の答弁に対して少し生意気なことを書いてしまったかもしれませんが、新聞やテレビの報道では伝えきれない「現場の空気」をお伝えしたかったとご理解ください。

 さて、県知事選まで一年強。これからさらに環境変化があるのかもしれません。その辺はよくわかりませんが、11月定例議会も一歩一歩頑張ります。

【渡辺創】