子ども手当

P1030108 先日、事務所に子ども手当てについて考えを聞きたいと電話があったとのこと。事務所スタッフが応対したようですが、私自身が不在でお話できなかったので、このブログを通して一言。

 私は「社会全体で子育てを支える」という民主党の基本姿勢に共鳴しています。民主党の子育て支援策の柱であり、少なくとも現行規模の子ども手当の継続は民主党として譲ってはならない一線です。

 このブログでも書いたことがあったと思いますが、私は小泉政権の頃、毎日新聞で少子化対策・子育て支援政策を担当していました。当時の少子化対策・子育て支援は、行き詰っているというのが正直な印象でした。

 先にお断りをしておきますが、この場では、現金支給に絞って話を進めますが、現金支給だけが子育て支援ではありませんし、お金を配れば、すべてが解決するなどという極端な話をしているわけでもありません。また民主党は、子育て支援に関して「子ども手当」オンリーなわけでもありません。いわゆる働き方の見直しを進めることも重要ですし、地域でどうやって子育てを見守る枠組み作りもきわめて重要です。ただここでは、話がそれないように現金支給のあり方に絞って考えてみたいと思いますので、ご了解ください。

 政権交代前、日本の「児童手当」は、小学生以下に基本月額5000円。乳幼児加算と言って、まさに私が担当の頃にできた制度ですが、0・1・2歳児に5000円を上乗せし、3子目以降にも5000円を加えるというものでした。児童手当は、出生率向上の対策として少しずつ額を引き上げながらやってきたけれども、効果が出ていないというのが実態でした。

 背景には、うわべはともかく「子育ては家庭でやるものであって、社会で担うというのは・・・」と首をかしげている価値観が漂っていました。そのあたりが日本の子育て支援策が行き詰る根本原因なのでしょうが、「社会全体で子育てを支える」と明確に打ち出した民主党の姿勢はまさに新鮮で、特に私自身が「中途半端な現金支給をだらだらと続けるなら、ヨーロッパで効果をあげている思い切った現金支給をやってみるべき。それが日本の子育て支援が大きく変わるきっかけになるのではないか」と考えていたので、子ども手当は、その考えをまさに具体化した内容だったと言えます。

 なぜ現金支給なのか。できることなら様々な支援策を行政サービスとしてすべて提供できることが理想です。しかし現実には、社会環境、子育て環境が多様化する中で、それぞれが求める、また必要とするサービスも多様化しています。そしてサービスの提供者も、行政もあれば、民間企業も、NPOも、ボランティア団体もあります。提供側も多様化しているわけです。

 よく子育て支援というと、保育所の整備・待機児童の解消という話になります。「子育てと仕事を両立したい」というニーズは重要ですし、社会の労働力確保という面からもそのニーズに対応していくことは最優先の課題です。しかし、誤解を恐れずに言えば、子育てと家事に専念したいという保護者には関係の薄いサービスとなる面もあります。また同じ保育にしても、昼に働く保護者と夜に働く保護者ではニーズや必要性が違ってきます。子育て支援策のキーワードは、やはり「多様化」です。置かれている状況が違えば、求めることも違ってきます。100の家庭があれば、求めるもの、抱えている課題も100あるわけです。

 だからこそ、あくまでも次善の策ではあるけれども「サービスを受ける側」と「提供する側」の間に介在する費用を手助けすることで、より多くのニーズに寄り添いたいというのが子ども手当の発想です。当然お金の使い方は、毎月の保育料になる家庭も、専業主婦のお母さんがリフレッシュするための一時預かりの費用になる家庭も、本や学用品を買う家庭も、修学旅行の費用になる家庭も、給食費になる家庭も、将来を見据えて進学費用になる家庭もあっていいわけです。

 政治活動を始めてから、様々なところで「子ども手当」についてのご意見をうかがいます。賛否両論ありますし、どちらの意見にも重要な要素が含まれています。ただよく聞くお話の中に「みんな苦労して子育てしてきた。親が自分で子どもを育てるのは当たり前だ」というものがあります。その通りです。我々が掲げている「社会で支える」という発想は、当然責任を放棄させるということではありません。しかし、子育て環境が大きく変化しているのも事実です。例えば、私自身も5歳と2歳の二児の父親ですが、我々の世代は「一生懸命働けば、給料が上がっていく。年齢が上がれば給料が上がっていく」という時代に生きていません。これは我々と親世代を比較すれば、大きな違いです。子どもが成長していく中で、膨らんでいく子育てコストを担いきれるのかという不安があるのは、この時代を生きる我々の正直なところでしょう。もちろん現実には、何をしてでも子どもをちゃんと育てていくという覚悟と意地は持っているわけですが、同世代の仲間の中に、その不安があるから結婚もしない、子どもも持たないという考えがあるのは十分理解できます。

 日本は子どもにお金を使わない国です。高齢化が進む中で、国の子育て支援にかける予算は、GDP比で0・8%程度しかなく、先進国で最低水準。子どもの貧困率も先進国の中で深刻な状況にあります。社会として、国として、自治体として、未来を担っていく世代に力を注ぐことこそ、苦しい時代に求められることだと私は信じています。

 国会では、子ども手当の行方が焦点となっています。昨日の菅首相発言が今朝のTVなどでも取り上げられていましたが、衆院選前に額を決めるにあたって小沢さんの発言がきっかけになったことは、これまでも新聞などで何度も伝えられてきた内容です。

 今の国会の状況を見ていると、やりきれない気持ちになります。大事な政策を、与野党間も、与党内も単なる対立を煽る材料に貶めるのではなく、国民にとって真に意義のある議論をしてほしい。心からそう願います。

 もう一度、「チルドレン・ファースト」の旗をたてた民主党であったことをしっかり思い出さなければなりません。
【渡辺創】

 写真は、5歳の娘がアイロンビーズ(というらしいのですが、いま一番楽しそうに遊んでいるおもちゃ)で作ってくれた「パパの星」とのこと。イメージカラーにあわせて作ってくれたそうです。大事なお守りになりました。